Vol.58 数多くの分野で卓越することを望むとき
#58 多くの分野に満遍なく強みを持つことを期待していないか
弱みのないことを求めてしまうのに似ていますが、なるべく数多くの分野のことに適した資質があればいいなぁと思ってしまうのは、自分の欲なのでしょうか。
おそらく、自分自身に対して、多くを求めているからこそ、自分以外の一緒に働く人に対しても「多くの分野で秀でていてほしい」と思ってしまうのかもしれません。
「多くの分野に満遍なく強みを持っていること」を求める心は、一つの活動や成果のために自分のもっているすべてを投入し卓越している人の存在があるからと言われています。自分には無い資質を磨き上げ、優れた成果を残している人を横目に「自分にも、できる」と、自分の欠けている部分を補おうとするのかもしれません。
ですが、その卓越した人は、すべての分野で卓越しているかな、と考えてみると、意外にそうでなかったりします。
そんなにたくさんの分野で、人よりも優れているなんて、落ち着いて考えれば難しいことです。
先日、シン・ゴジラのDVDを観ました。「人知を超えた地球上で最も進化した生物」と言われたゴジラでさえも、長時間活動することはできませんでした。ウルトラマンの活動時間も3分間でした。
多くの資質をそれなりに磨いて、それなりの強みを多く持つのではなく、一つの分野に集中して強みを磨き上げ、卓越性へと進化させていくうちに、弱みのないことを求める暇も心も無くなっていくと思っています。
人の卓越性は、一つの分野、あるいはわずかの分野において実現されるのみである。
P.F.ドラッカー 「経営者の条件」