Vol.55 人の強みを生かす

#55 強みを生かすことよりも、弱みの克服を優先していないか

 教育の影響とは言われますが、人は、どうも、自分の弱み、マイナス面に目が向きがちです。


 たとえば、自分の弱みは、冗談が言えない・軽い空気を作れない、というもの。面白いことを言えない、っていうのも長年の弱みです。 これらがとても苦手なことを良く知っているので、自然に面白い冗談を言える人を見ると羨ましくてたまりませんでした。「ああいう楽しい空気を作れる強みは羨ましいなー」と心底思っていました。今も「素敵だな」とは思います。

 ですが、その弱みを、どうにか努力して克服して、今よりも場の空気を固くすることが減ったとしても、果たしでどうでしょう。

 やっぱり、自然に上手に出来る人が創り出す場の軽やかさには到底かなわないわけです。もしかしたら、更に差が開いているかもしれません。弱みを克服した、と思っても、自分の中でのレベルが変わっただけで、「他の人と比べたら」ですが、強みと言えるレベルには至らないはず。

 だとしたら、自分の強みを磨くことに時間と労力を投じた方が、自分にとっても周囲にとっても幸せです。 

 自分の弱みを、自力で克服しよう・乗り越えようとするのではなく、他の人の強みによって、弱みを無意味にすることです。強みも弱みも、能力ではなく「資質」のことです。生まれ持ったものなので、別のものに変えることはなかなか難しい。

 幸い、組織には自分以外の生まれを持った人が大勢居ます。それぞれの強みが活かされれば、誰かの弱みの影響力は影をひそめる。そんな関係性を築きたいです。

  

組織といえども人それぞれがもつ弱みを克服することはできない。しかし組織は、人の弱みを意味のないものにすることができる。組織の役割は、一人ひとりの強みを共同の事業のための建築用ブロックとして使うところにある。

P.F.ドラッカー 「経営者の条件」