Vol.10 語られない顧客の希望を形にする
花をプレゼントしたいときの注文時の言葉
プレゼントで花を贈ろうと考えたとき、花屋さんには何と注文しますか。パーティーなど特別の催しの中でプレゼントするならば、会場の雰囲気を参考にお伝えすることもできますが、アレンジメントでもブーケでも、「こうしてほしい」と花屋さんに要望をお願いするのって、案外難しかったりします。
なにしろ、花は色々な種類があります。花の名前が分からないと「〇〇を入れてください」とお願いすることもできません。
ある朝、花屋さんを訪れたときのことです。家族の誕生日に、プレゼントで花を届けたく、ブーケを作ってもらうためでした。時間は8時過ぎ、開店直後だったと思います。9時には出発したかったのですが、1時間もあれば花屋さんも作ることができるだろうと思い、早めに訪問したところ、予想にない展開に。店内には花があまり無く、店員さん達は、市場からの仕入れが帰ってくるのを待っているようでした。すでに出来上がっている白一色のブーケの他に目ぼしい物は無く、店内の花を使ってプレゼントを作ってもらうのは難しいのが、一目で分かりました。
(あら、白いブーケしかない。でも、今日のプレゼントのイメージは違う。もうちょっと大人っぽくて優しい印象で、ピンクの色が入ってる、そういう感じの。仕入れから帰ってくるのはいつ頃だろう。時間が心配だな)
短い時間の中で考えを巡らせました。そして
「ブーケをお願いできますか?ピンクっぽい印象で。大人っぽく優しい感じに。40代の女性に差し上げたいんです。でも、今はこれしか無いですよね?白一色はちょっと希望と違って。。。でも時間もあまり無いんです。」一つあるブーケを目線に捉えながら店員さんにおそるおそる聞いてみました。
予想通り、仕入れ便の帰りを待っているとようでしたが、帰りの時間もハッキリせず、店員さんも私の要望に困惑しているようでした。
なので、「この花(=白いブーケ)を使って、ピンクっぽい印象のブーケにしてもらうことは出来ますか?」と聞いてみたところ、ラッピングの包装紙に工夫をすれば十分可能と言ってくださり、それでお願いすることにしました。
「わたしが思っていたのとは違うのだけれど、、、、」
ブーケを作っていただくのを眺めていると、ピンク色でも数種類の包装紙があるようでした。店員さんが最初に手に取った物は、どちらかと言うと小さな子どもに好まれそうな、かわいいピンク色のものでした。
(あ!ピンクはピンクでも、そういう感じのピンクでは無いのだけれど、、、)
と内心思った矢先、別の店員さんが「この方が良いよ」と、別のピンク系のラッピングを作業中の店員さんに促してくれました。
最初に私が伝えた「40代の女性に贈りたい、大人っぽく優しい雰囲気で」という希望を叶えてくれる、少し紫がかった上品なピンク系のラッピングでした。
わたしが伝えたピンクには、「可愛らしい雰囲」の意味はありませんでした。「大人の女性が纏うような、品があって優しい印象」の意味を、自分でも無意識にイメージしていたことに、その時気づきました。
「子どもっぽいのは違う」「上品に」
どちらも私は言葉で明言していませんでしたが、店員さんは、長年の経験から「この人は『ピンクっぽい』と希望の色を何度も言っているけれど、ピンクという言葉を、イメージや雰囲気を伝えたくて何度も言っているのであって、望んでいるのは大人の上品さや優しさなのだろう」と受け取ってくれたのだと思います。
言葉通りに受け取らず、その言葉の意味する裏側の部分を読み取って下さったのだと思いました。
ピンクはピンクでも
ラッピングが完成しました。
ブーケの中には、元からの白い花とは別に、落ち着いたピンク色のスターチスが加わっていました。サービスしてくださったそうですが、白一色のさっぱりした印象だったブーケが、大人っぽいシックなラッピングと、中央の控え目な色味のおかげで、とっても素敵なプレゼントブーケが出来上がりました。最初に店内で発見した時とはまるで別の花束に仕上がっていました。プレゼントとして、とても喜んでいただけました。
言葉通りに意図を受け取り判断することは間違いではありません。
ですが、その言葉が実際に意味することやモノが何か、背景や裏側まで認識して察知できるだろうか、経験がものを言う部分もあると思いました。果たして自分にできるだろうか?この花屋さんのように、日ごろから自分の思考や感性を広げておく必要もあるのだろうなと思いましたし、自分の価値観や思い込みに縛られず、意識的に磨く必要があると思いました。
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