Vol.8 「どんな人だったか」お客さんのことを覚えている力


 大豆他の食品アレルギー生活で難儀なのが、その食品の中にアレルギー物質が含まれているか分からない時です。

 工場で生産される加工品は商品裏面に表示されているので調べることができますが、工場生産物では無い食品は、成分表示がされておらず、一見で分からない場合が多いです。

 退院して「パンが食べたいなぁ」と思っていた頃、ご近所のあるパン屋さんの話しを複数の方から聞きました。「良い原材料を使っているから、安心して食べられるよ。」度々噂をお聞きしたので、パンを買いに行ってみました。

 お店の方に色々お聞きしながら、自分の大豆アレルギーの話しもしつつ、噂の「おいしくて原材料が良いパン」を購入しました。とても美味しかったです。

 そこから1月半が経った頃、再びパンを食べたくなり、お店を訪れました。

 こういう時、客としては、ちょっとモヤっとするわけです。自分はお店屋さんを覚えている→わたしのアレルギーの事も覚えていてくれる、、、かしら、、と思う一方で、
 一日に何十人ものお客さんの相手をしているお店の方にしてみたら、客一人ひとりのことを覚えられているわけではありません。忘れてしまって当然だと思いますし、実際、お店屋さんに覚えられているっていうことは、あまりありません。

 「また、アレルギーの話しをしながら、『これは大豆と落花生は入ってませんよね?』と確認しなければならないのかしら、、、」不安がよぎります。新しいお店は自分も慣れていないのと、工場生産品では無い為にパッケージの見た目で商品を覚えることもできません。欲しいパンがバゲットで、同じように見える物が幾つもあり、自信を持って「前回、大丈夫だったこのパン」と選べませんでした。

 おそるおそる店主の方に話しを始めました

 すると、店主の方は、私のアレルギーを覚えていてくださいました!

「(今わたしが手に取ろうとしている)そのパンは、前回購入されたのと同じですよ」声をかけてくれました。

 とっても嬉しく有難かったのですが、お会計を済ませて店を出た後、このお店屋さんの対応が普通のことでは無いとジワジワ感じ始めました。

 アレルギーだから?私の話しが印象強くて記憶に残ったのかな?色々気になりますが、覚えていてくださったというのは紛れもない事実です。そこには、お店の方の想いと行動、力があると思いました。

 「お客様のことはしっかり覚えておくように」と上司から言われると、仕事に必要な能力を磨け、と言われているような強制の感じがあるかもしれません。そこに、お客様を想う心があるかどうか?は、全ての場合で「ある」とは言えないかもしれません。

 ですが、パン屋さんが覚えていてくださり、さらっと教えてくれたことには、お店の方の心が感じられました。話しを伺っていると、食品を扱うお店ゆえに、他のお客様にも同じようにアレルギー体質の方がいらっしゃるようでした。こじんまりとしたお店、生活に身近な立地でご商売をされているからこそ、わたし達利用者に優しいのかもしれない。心があったから、お客の事も「覚えておこう」と力みや義務感ではなく、「大変だねー」の労りの感情から自然に憶えていてくださったように感じました。

 お客様のことを覚えているのは、記憶力とは異なる物が必要なのかもしれないと感じる出来事でした。


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そう感じられたことが、みなさんにも必ずあると思います。
そこには、会社やお店のお客さんを想う優しさと行動があります。
それはその時突然や偶然に表れたものではなく、きっと、時間をかけて育てられてきた、その会社独自の力です。
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