Vol.9 「お客様にとって必要な事は何か?」を考え準備に時間を使うこと
自分の食べる物を全て手作りしている人、は今の時代は多数派では無いはず。作って食べる人でも、たまの機会は外食をしているでしょうし、中食と呼ばれるような他社によって作られたものを買って家で食べることも一般的です。
飲食店など店頭対面で販売されている食品にはアレルギー表示義務がありません。
一方で、百貨店等では利用客の安全に配慮して、出店する事業者には販売商品のアレルギー表示を義務にするのが一般的と聞きました。常設の店舗に限らず、期間限定の仮設出店の場合も含まれるそうです。
大豆アレルギーの自分には、醤油などで調理されているかもしれない料理をいただく外食は厳しいところがあり、アナフィラキシーで退院後数か月経っても飲食店を利用できないでいました。
そんな折り、駅ビルの催事に市内のインド料理屋さんの初出店がありました。スパイスから作るカレーは自宅で自作もしてみましたが、さすがにプロの味を再現することはできず満足度80%といったところ。まだ夏も暑かったので、カレーは一番食べたいメニューでした。
インド料理屋さんのSNSは以前からフォローしていました。出店に向けて準備を進めている中で、販売する商品の成分表示ラベルを作成している投稿を目にしました。
「あの店のカレーの原材料って、こんなに細かいんだ!」
化学調味料などを一切使わずにスパイスから作られているとのことで、この味を出すにはそれなりの種類の材料が必要なのだ、というのも驚きでしたが、
私が驚いたのは、本来、表示義務を課せられずにお店でカレーを提供しているお店が、自分達の商品を丁寧に細かく調べて成分表示に対応しようとしている点でした。
「こんなに面倒そうなこと、しかも普段は一切やっていないだろうことにも、ちゃんと準備しているんだ」
初出店とのことだったので、準備は様々にあったと思います。注文を受けてから調理して提供する店内飲食とは違い、催事は全てのプロセスを同じ場所で進めることができません。席数の決まっている店舗営業時とはお客様回転率も違うでしょうし、お客様とのやりとりの内容や、お会計の方法も違います。販売時間も店舗営業の時よりも断然長くなり、それらに備える事前の準備は本当にたくさんあったと思います。
店長さんが自作しているラベルは、各種スパイスの他、ニンニク、ショウガ、セロリなど素材単位で表示されていました。表示する成分が数多いため、数行の帯のようになっていましたが、「細かい作業も楽しい」と店長さんはSNSに綴っていました。
他の事前準備もある中で、店舗で提供する際には必要のないプロセスにこれほど丁寧に楽しく取り組めるのは、「面倒」と思っていないからだろうな、と思いました。表示してくれるのは有難いことですが、そのための手間や煩わしさを、嫌に思われずに進めることができるのは、消費者のことを思ってくれているからだろうと私には思え、有難かったです。久しぶりの本格カレーは、本当に美味しかったです。
催事が始まりました。SNSで投稿されていたように、商品には細かすぎるほどの成分表示のラベルが貼られていました。安心して購入でき、専門店ならではの味を自宅で楽しむことができました。お店に行かなくても食べられたのも嬉しかったですが、面倒くさそうなプロセスを踏んでくださったおかげで、何でできているか分かり、今後は安心してお店を訪れての注文もできると思います。
キャッチコピーや宣伝文句など文言やPOPも、商品に関する情報発信・情報提供と言えるかもしれません。人の心に響く言葉で表現できれば販売数も増えるかもしれません。「必要な人に必要な物を届ける」点では必要な情報発信です。ですが、限りある時間を使って原材料を全て明らかにして、ラベルという形で情報発信するのは、「安心して食べてもらたい」とお店が消費者のことを見てくれているからだと私には感じました。
何を文字にして発信するかは、多くの業種、多くの製品にも当てはまることだと思いす。その情報発信は「売り上げが増えればいいな」なのか「お客さんに安心して選んでいただきたいな」なのか、微妙に違うのかもしれないと感じる出来事でした。
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「この対応がうれしかった」「この声掛けがありがたかった」
そう感じられたことが、みなさんにも必ずあると思います。
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それはその時突然や偶然に表れたものではなく、きっと、時間をかけて育てられてきた、その会社独自の力です。
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